「まるごと解析」に関する一考

ハードウェアの進化に伴いCAEの分野で言われるようになった「まるごと解析」。
部分ではなく全体を解析できることは大きなメリットだが、デメリットもあると思う。

そこで、主にメーカにおける製品開発の立場から「まるごと解析」について考えてみる。
きっかけはtwitter#CAEjpハッシュタグでの@jikosoftcomさんのつぶやき。

@jikosoftcom
確かにコンピュータの性能がだいぶ上がってきてるため、たくさんの近似を導入して計算負荷・精度を下げるより何も考えず詳細モデル丸ごとみないな風潮はありますね。


この風潮は危険だなと思ってる。理由は以下。

  1. まるごと計算すると、あとの分析が大変だから。現象が複雑になる分要因分析が難しくなる。その結果設計にどう反映すればよいかわからなくなる。
  2. まるごと計算しない、つまりモデル化・簡略化ができるってことは、少なくとも現象をある程度理解できている証拠。逆は怖い。
  3. 開発部門から「よくわかんないからまるごと計算して」って言われて、まるごと計算して結局よくわからなかった場合、「CAE使えねーじゃん」ってなること。

でも使いかたはあると思う。(必要な前提条件はいろいろあるが)

  1. 評価関数が明確になっていて、十分なコンピュータ資源を活用して、計算をぶん回せる場合。
  2. やっぱり複雑な現象で、単純モデルでは解けない場合。設計案を出すのではなくて、現象を理解したい場合。
  3. お客さんへの技術的アピールw

そして僕がとても気になるのはこういう部分

@tenshan
1Dシミュレーションに、より本質的な知性を感じる。Front-Loadingを突き詰めて行くと、3Dモデルでなく、1Dに帰着していく。

@etopirika5
モデル化によって3Dを1Dにすることで,現象の本質がみえてきますね.

科学の本質ってのはやっぱり「モデル化」にあると思う。だから「まるごと解析」だけでは不十分な点がある。これに注意を払わなくてはいけないと思う。


僕は深く理解したい、本質を解りたい。種々の複雑な現象が一つにつながった瞬間の快感を多く味わいたい。これはモデル化によって得られることだと思う。


そして、それらを助けてくれるCAE(CADやCAMもね)をいろんな人に活用してもらいたい。だから「まるごと解析」は目指すべき一つの方向だとは思うが、使い方は色々考える必要がありますよってこと。


※2010.7.12 ちょっと追記